2025年、自民党総裁選で高市早苗氏が新総裁に選出され、戦後初の女性総理大臣が誕生する見通しとなりました。
長年「保守派の論客」として知られてきた高市氏の首相就任は、日本政治の新たな歴史の一歩として大きな意味を持ちます。
しかし、その記念すべき一歩の裏で、大きな議論を呼んでいるのが、総裁選中に語った次の言葉です。
「国のかじ取りを担う以上、ワークライフバランスなんて捨てる覚悟で臨むべきだと思っています。」
この一言に対して、ネット上や一部メディアでは「時代錯誤」「女性蔑視的」といった批判が噴出する一方、「政治家なら当然」「これくらいの覚悟がないと国は変わらない」と支持する声も少なくありません。
今回は、この「ワークライフバランス発言」を切り口に、
- 高市氏の背景と発言の真意
- なぜ賛否が割れるのか
- 日本社会が抱える“覚悟”への違和感
- 本当の論点はどこにあるのか
という4つの視点から、詳しく解説していきます。
1. 女性初の首相へ――高市早苗という政治家の歩み
高市早苗氏は奈良県出身。総務大臣、経済安全保障担当相などを歴任し、自民党内でも強い存在感を示してきました。
「国益」「憲法改正」「防衛力強化」など保守路線を一貫して主張し、安倍元首相や保守派議員からの厚い支持を得てきた人物です。
その政治スタイルの根底にあるのが、「妥協しない信念」と「結果を出すための執念」です。
総裁選でも、彼女は「生ぬるい政治では日本は沈む」という強い危機感を繰り返し語ってきました。
そんな中で出た「ワークライフバランスを捨てる覚悟」という発言は、まさにその信念の延長線上にあります。
2. 発言の真意:「すべてを犠牲にしても国を守る」
問題の発言は、総裁選の討論会で記者から「政治家もワークライフバランスを重視すべきでは?」と問われた際の答えでした。
高市氏はこう続けています。
「もちろん国民の皆さんにはワークライフバランスを大切にしていただきたい。しかし、国家のかじ取りをする者は、国民の命と暮らしを守るために、24時間365日働く覚悟が必要です。」
つまり、彼女の意図は「全員が働き詰めであれ」という話ではなく、「国家のトップとしての責任の重さ」を語ったものです。
「政治家とは本来そうあるべき」という信念の表明だったわけです。
3. なぜ批判が噴出したのか? 3つの背景
この発言が炎上した背景には、単なる“言葉尻”を超える、現代社会特有の事情が関係しています。
(1) 「働きすぎ社会」へのアレルギー反応
日本では長年、長時間労働や過労死が社会問題となっており、「働き方改革」「ワークライフバランス」は政治が率先して掲げてきたスローガンです。
そのため、「バランスを捨てろ」という表現自体に拒否反応を起こす人が多いのです。
(2) “女性初の首相”への期待とギャップ
「女性初の首相」として、より多様な働き方や価値観を象徴するリーダー像を期待していた層も多く、「結局、男性政治家と同じ体育会系か」と落胆する声も出ました。
(3) メディアとSNSによる“切り取り報道”
実際には「政治家としての覚悟」という文脈だったにもかかわらず、「ワークライフバランスを捨てろ」だけが切り取られて拡散され、誤解が増幅しました。
4. 「覚悟」を語ることが“悪”になっていないか?
ここで改めて考えるべきは、「なぜ“覚悟”を語る政治家が批判されるのか」という点です。
冷静に考えれば、国のトップが「仕事と家庭の両立を大事にしたい」などと語っていたら、それはそれで批判されるでしょう。
国家のリーダーは危機の際、睡眠も休日も削って判断を迫られる立場です。
首相にとって「ワークライフバランス」は、もはや“贅沢な概念”なのです。
それでも、「そのくらいの覚悟を言葉にすることすら許されない」という空気があるとしたら、それは私たち有権者の側にも問題があるのではないでしょうか。
5. 本当の論点は「覚悟の使い方」
もちろん、「覚悟がある=成果を出せる」ではありません。
重要なのは、その覚悟をどの方向に使うかです。
- 国民の生活を豊かにする政策を練ることに使うのか
- 外交や防衛で国家の独立を守ることに使うのか
- あるいは、自分の権力維持に使うのか
政治家の「覚悟」は、それ自体が目的ではなく、手段であるべきです。
高市氏の言葉が本当に重みを持つのは、その覚悟が実際の政策として、国民の暮らしにどう結びついていくかという点に尽きます。
まとめ:「覚悟」と向き合える社会へ
「ワークライフバランスを捨てる」という高市氏の言葉は、たしかに現代の価値観からすれば刺激的です。
しかしそれは、国家の舵取りを担う人物としての“覚悟”の表明であり、決して国民に同じ生き方を求めたものではありません。
私たちは、政治家が“本気で日本を変えよう”とする言葉を、揚げ足取りではなく、その本質的な意図と中身で評価する成熟さが求められています。
批判だけで終わらせるのか、それとも「覚悟ある政治家」として応援するのか。
この一言をどう受け止めるかは、国の未来をどう望むかと深く結びついているのです。
【結論】
「ワークライフバランスを捨てる覚悟」とは、国の舵取りを担う者としての“責任”と“覚悟”を示した言葉である。批判に終始するよりも、その覚悟がどのように政策へと結実するのかを、私たち有権者は冷静に見極めるべきだ。