沖縄県南城市で、前例のない政治的混乱が起きています。女性職員へのセクハラ行為が「認定」された瑞慶覧長敏(ずけらん・ちょうびん)市長が、議会からの辞職勧告にも応じず、「私はやっていない」と辞職を拒否。さらに、対立を深める議会を解散するという強硬策に踏み切りました。
「セクハラ認定された首長が議会を解散」という極めて異例の事態に、市民の間では怒りと不信が広がっています。
■ セクハラ「認定」されても辞職拒否「私はやっていない」
問題の発端は、2024年に市役所の女性職員が「市長から不適切な言動を受けた」として訴えたことです。
市が設置した第三者調査委員会は、証言やメール記録などを精査した上で、2025年夏に次のような結論をまとめました。
「市長の言動は、職場内の立場を利用したセクシュアルハラスメントに該当する」
具体的には、会議後に女性職員の肩を触る、食事の場で容姿に関する不適切な発言を繰り返すなどの行為があったとされています。
しかし、瑞慶覧市長はこの調査結果を全面的に否定。
「私はセクハラなどやっていない。これは誤解であり、事実とは異なる」
と主張し、辞職勧告決議を出した議会にも応じない姿勢を示しました。
■ 市議会は「辞職すべき」と決議 → 市長はまさかの“解散”カード
2025年9月、南城市議会は全会一致で市長に対する辞職勧告決議を可決しました。
議会側は次のような声明を出しています。
「市民の代表である公務員がセクハラ認定を受けた以上、市長職を続けることは市政への信頼を損なう」
「市長自ら身を引くことが、行政の正常化につながる」
しかし瑞慶覧市長は、なんと議会解散という“逆襲”に出ました。
地方自治法では、不信任決議が可決された場合、首長は「辞職」か「議会解散」のどちらかを選ぶことができます。市長は後者を選び、10月上旬に議会解散を正式表明しました。
「私はやっていない。市民の信託を受けた立場であり、辞職する理由はない」
この発言に、議場は一時騒然となったといいます。
■ 市民の反応は厳しく「恥ずかしい」「市政が止まっている」
市長の強硬姿勢に対し、市民の怒りと失望は日増しに高まっています。地元メディアの街頭インタビューでは、次のような声が相次ぎました。
- 「認定までされて辞めないなんて、常識では考えられない」(50代女性)
- 「市政が完全にストップしている。市民の生活を考えていない」(30代会社員)
- 「南城市が全国ニュースで“セクハラ市長”と報じられて恥ずかしい」(70代男性)
実際、保育所整備計画や観光振興予算の審議がストップし、市政運営は事実上の「空転状態」に陥っています。
■ 今後は「出直し選挙」へ 民意が最大の審判に
議会解散により、南城市では40日以内に出直し市議会選挙が行われる見通しです。
ただし、仮に新議会が再び市長への不信任決議を可決すれば、今度は市長は辞職するしかない状況に追い込まれます。
専門家は今回の事態についてこう指摘します。
「法的には市長の行動はルールに沿っているが、“セクハラ認定”という事実を無視して市政を続けるのは、市民感情との乖離が大きい。出直し選挙は“市長続投の是非”を問う実質的な住民投票となるだろう」(地方行政学者)
■ まとめ:「法」と「信頼」のズレが突きつける地方政治の課題
今回の南城市のケースは、法制度上の“首長の権限”と、市民が求める“説明責任”とのギャップを浮き彫りにしました。
セクハラ認定を受けても法的に辞職が義務付けられていない一方で、「市長としての資質」が問われているのです。
瑞慶覧市長の「やっていない」という主張が市民に受け入れられるのか、それとも「説明責任を果たしていない」として退陣を迫られるのか――。
出直し選挙は、南城市の未来を決める重大な分岐点となるでしょう。
【結論】
セクハラ認定された首長が辞職を拒み議会を解散するという前代未聞の事態は、「法は守っていても信頼は失う」政治の現実を示しています。最終的な判断は、市民一人ひとりの投票行動に委ねられます。