1. 騒動の概要:何が起きたのか?

2025年11月、都内の「名代 富士そば」神谷町店にて、多言語(日本語・英語・中国語・韓国語)で書かれた以下の内容の貼り紙が掲示されました。

「旅行者の方は、ランチタイムの来店をご遠慮ください。当店は、この近辺で働く人たち・学ぶ人たちを優先します」

この写真がSNSで拡散されると、「地元客を守る英断だ」という賛成意見と、「排他的で差別的だ」という批判意見が真っ向から対立。運営本部は後に「不適切であった」として貼り紙を撤去し、謝罪する事態となりました。

2. なぜ「客を選ぶ」必要があったのか? 背景にある3つの理由

飲食店、特に「立ち食いそば」という業態において、外国人観光客の増加は、単なる「売上アップ」では済まされない構造的な問題を引き起こしています。

① 「回転率」こそが生命線

立ち食いそばは、低単価(数百円)で大量の客を捌くことで利益を出すビジネスです。

  • ビジネス客: 注文から完食まで5〜10分。食べ終えたらすぐ退店。
  • 観光客: 注文に迷い、料理の写真を撮り、ゆっくりと味わう。滞在時間がビジネス客の3倍以上になることも。ランチタイムのわずか1時間に、1人の観光客が3人分の「席」を占有してしまうと、本来のターゲットであるビジネス客が店に入れなくなり、ビジネスモデルが崩壊してしまいます。

② 「空間の専有」問題

都心の店舗は非常に狭く、通路も限られています。そこに巨大なスーツケースを持ったグループが入店すると、物理的に他の客が通行できなくなったり、転倒の危険が生じたりします。

③ 「ランチ難民」の保護

店舗がある神谷町はオフィス街です。限られた休憩時間内に食事を済ませなければならない会社員にとって、観光客による行列は死活問題。店側には「いつも支えてくれている常連客(会社員)を待たせたくない」という、地域密着型ゆえの正義感がありました。


3. ネット上の賛否両論

この騒動は、日本のオーバーツーリズムに対する国民の「本音」を浮き彫りにしました。

賛成・共感の声批判・慎重の声
「ランチ難民には救い。地元優先は当然」「特定の層を狙い撃ちにするのは差別に当たる」
「スーツケースの持ち込みは本当に邪魔」「『ランチタイムは混雑します』というお願いにすべき」
「安価な店に高い接客コストはかけられない」「日本全体のブランドイメージを損なう」

4. 飲食店が直面する「インバウンド対応」の限界

多くの飲食店が、インバウンドの恩恵を享受する一方で、以下のようなコスト増に苦しんでいます。

  • オペレーションの複雑化: 多言語対応、食べ方の説明、アレルギー対応。
  • マナーの違い: 持ち込み飲食や、1杯を複数人でシェアするなどの文化差。
  • 価格のジレンマ: 観光客向けに値上げをすれば「便乗値上げ」と叩かれ、据え置けば地元客が追い出される。

結論:求められるのは「排除」ではなく「ルールの明確化」

今回の富士そばの件は、現場の店長が抱えていた「常連客への申し訳なさ」が、言葉足らずな形で表に出てしまった結果と言えるでしょう。

これからの飲食店には、単に「お断り」とするのではなく、**「当店はスピード重視の店である」「大きな荷物の持ち込みは制限する」**といった、客層ではなく「利用ルール」を明確に提示する工夫が求められています。

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