2025年11月、JR東日本の交通系ICカード「Suica(スイカ)」のシンボルとして長年親しまれてきた「Suicaのペンギン」が、広告・広報の主要ビジュアルから“卒業”することが発表されました。
2001年のSuica誕生以来、20年以上にわたってブランドの顔を務めてきたキャラクターの“交代劇”に、多くのファンや利用者が驚きを隠せません。


■ 「Suicaのペンギン」とは?

その可愛らしさと無言の存在感で人気を博してきた「Suicaのペンギン」。
デザインを手がけたのは絵本作家・イラストレーターの坂崎千春さんで、2001年のSuica導入時に登場しました。

初期の広告では、「Suicaでスイスイ」というコピーとともに、ペンギンが改札をスムーズに通り抜けるシーンが印象的でした。
以来、テレビCM、ポスター、グッズ、駅構内の装飾など、さまざまな形で登場し、Suica=ペンギンというイメージが完全に定着していました。


■ 突然の「卒業」発表 ファンから悲しみの声

JR東日本は2025年11月上旬、公式発表の中で「Suicaの新たなブランド戦略に伴い、ペンギンの使用を段階的に終了する」と明らかにしました。
今後の広告展開やデジタルサービスでは、ペンギンの代わりに“シンプルでデジタル志向の新ビジュアル”を採用する方針だとしています。

この発表を受け、SNS上では次のような反応が広がりました。

  • 「Suicaのペンギン、いなくなるのは寂しい。まるで青春の終わりみたい」
  • 「無言で改札を通るペンギンが好きだった。あれほどのブランド資産を手放すのか」
  • 「ペンギン=Suica。ブランド力の源を失うのでは?」

一方で、「ブランド刷新の時期として妥当」とする意見もあり、賛否が分かれています。


■ JR東日本の狙い:デジタル化・国際化への対応

JR東日本がペンギンを“卒業”させる背景には、デジタル化と国際化の加速があります。

近年、Suicaはスマートフォンやウェアラブル端末での利用が主流となり、紙のカードを持たないユーザーが急増。
とくに訪日外国人の利用拡大に伴い、「ペンギン」というキャラクターが必ずしもグローバルに通用しないという課題が指摘されていました。

新戦略では、ペンギンのような“かわいさ”よりも、

  • デジタルな信頼性
  • スマートで国際的な印象
  • シンプルで統一感あるデザイン
    が重視されるといいます。

たとえば、Apple PayやGoogle Payのように、キャラクターに頼らず“ロゴと機能”で信頼を築く方向に舵を切る、ということです。


■ ブランド刷新の具体例:「モバイルSuica」の再構築

すでにSuicaのブランド刷新は水面下で進んでおり、たとえば次のような動きが見られます。

  1. モバイルアプリのデザイン変更
    アプリアイコンからペンギンが小さくなり、代わりに“緑のSロゴ”が目立つデザインに。
    UIもよりシンプルな配色に統一され、国際的ユーザー向けの英語対応が強化されています。
  2. 新カードデザインの検討
    JR東日本関係者によれば、次期Suicaカードではペンギンを外し、抽象的な波紋デザインや幾何学模様を採用する案が検討中とのこと。
    これにより、キャラクターに依存しない“デジタルブランド”へと進化させたい狙いが見えます。

■ 「キャラクターからブランドへ」:時代の流れか?

近年、企業のマーケティングでは「マスコット依存」から「体験価値重視」への転換が進んでいます。
たとえば——

  • **ドコモの“ドコモダケ”**は2010年代に事実上の引退。
  • **SoftBankの“白戸家シリーズ”**も2020年代に終了。
  • **ANAの“マイレージくん”**も広告から姿を消しました。

どの企業も共通して、「かわいさ」より「ブランドの一貫性」「国際的通用力」を優先しています。
Suicaも同じ流れに乗った形です。


■ とはいえ…“ペンギン文化”は完全には消えない?

一方で、JR東日本は「ペンギンのキャラクターを完全に消すわけではない」とも説明しています。
今後は、駅の装飾やイベント、限定グッズなど“ファン向け”の形で継続的に登場させる方針です。

実際、「ペンギンカフェ(東京駅構内)」や「Suicaペンギンぬいぐるみ」などの人気は根強く、関連グッズの売上は年間数十億円規模。
こうした“愛されブランド”を手放すことは、JR東日本にとってもリスクを伴います。

したがって、「表舞台からは卒業するが、裏では生き続ける」——そんな“静かな引退”になると見られています。


■ まとめ:Suicaペンギン卒業が映す「日本企業の転換点」

「Suicaのペンギン」の卒業は、単なるキャラクター変更ではなく、日本企業のブランド戦略が大きく変わる象徴的出来事です。

ペンギンが築いた“親しみやすさ”をどう引き継ぎ、
次の時代にふさわしい“グローバルでスマートなSuica”をどう実現するか。

Suicaブランドは今、転換点に立っています。
可愛いペンギンの後ろ姿に、私たちは“日本のデジタル時代の幕開け”を見るのかもしれません。

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